7月24日、たまたま日本テレビをつけていたら、「世界一受けたい授業」という番組で炭水化物摂取ダイエットというダイエット方法を紹介していました。
講師は、京都大学の森谷敏夫先生です。要旨は、
- 炭水化物を抜いても減るのは水分だけで脂肪は減らない
- 脳の栄養となるのは糖質だけで、炭水化物を抜くと脳が正常に機能しなくなる
- 炭水化物抜きの食生活を続けると、脳の栄養を取るため、筋肉が減り、結果として隠れ肥満になってしまう。
- 炭水化物抜きを20年以上抜くと、癌のリスクが男性で1.5倍、女性で1.35倍高まる
- 炭水化物を摂取しても、体温が上昇してエネルギーが消費されるので、脂肪として蓄積されない。
- 摂取エネルギーの60%を炭水化物で摂取するバランスの良い食生活が望ましい。
といった所でしょうか。森谷先生の体は、65歳にして筋肉モリモリで、話に説得力がありそうに聞こえます。
ただ、実際に低糖質ダイエットを行っている者としては不自然さを感じます。
まず、低糖質ダイエットで減るのは水分だけか、という点が疑問です。
確かに炭水化物を抜き始めた直後に起きる急激な体重減少は水分の減少によるものだと思います。これで体重が減ったと思ってダイエットを止めてしまうと、脂肪が減らずに、また脂肪蓄積のループに入ってしまいます。しかし、ある程度の水分が抜けると、今度は脂肪が減少していきます。実際に私の体型はかなり脂肪が落ちてきており、「あれは全て水分だった」と主張するのは無理があります。
また、脳の栄養となるのは糖質だけかという点については、脂肪を分解して出来るケトン体が使用できるので間違いの様です。確かに短期的には、脳の栄養が不足するので頭痛がするといった症状が起きますが、1週間程度続けてそこを過ぎれば、問題は無くなります。
筋肉が減る点については、一概に否定はしません。体重減の成果を急ぐあまりに、炭水化物以外の栄養素も減らしてしまうと、その様な弊害が起きる事もあり得ます。しかし、その分、十分な蛋白質を摂る事で、筋肉の減少を抑えるというのが低糖質ダイエットの基本な訳で、筋肉を減少させてしまうのは、低糖質ダイエットが悪いのではなく、間違えたダイエット法を採用しているのが悪いからだと思えます。
バランスの良い食生活が良いのは確かでしょうが、そもそもどの様な食生活が「バランスが良い」と言えるのかは難しい問題です。
また、バランスが良い食生活で自然と健康状態になっていくとしても、溜め込んだ脂肪を負債だと考えれば、肥満とは負債が膨らんで首が回らなくなった状態です。ここでバランスの良い食生活で解消といっても時間が掛かる訳で、短期間で負債を無くすか、縮小するというのはアリだと考える訳です。
で、この件に関して検索してみました。
まず上位に引っ掛かるのは、炭水化物を摂って痩せられるという放送内容をそのまま受け入れているblog等です。でも、同じ京大つながりで低糖質ダイエットを推奨・実践している江部康二先生の名前を一緒にして検索すると、江部先生のblogに、森谷先生に関する記述が見つかります。
まずは、2009年5月28日のblog
クロワッサンの記事と糖質制限食 - ドクター江部の糖尿病徒然日記
これによると、森谷先生は、雑誌「クロワッサン」 2009年5月25日号で今回と同じ趣旨の持論を展開していた様です。
また、それの数ヶ月前、2009年1月22日放送のNHK「ためしてガッテン」にも森谷先生が出ていた様です。
低カロリーダイエット 失敗と成功の分岐点 - ためしてガッテン
江部先生のblogでは、脳がブドウ糖しか利用できないという論が間違いだという点などについて触れています。
また、放送後の7月25日のblog
作りおきおかずで簡単! 糖質オフのダイエット弁当 2万部達成しました。 - ドクター江部の糖尿病徒然日記
のコメントに、今回の放送について触れられています。
これによると、森谷先生は、中京大・体育学部卒なんですね。これであの体型が理解できた気がしました。
癌になるリスクについては、江部先生のblogを引用していますが、下記が分かりやすいです。
マイルドな(中等度の)糖質制限で脂肪摂取が増えるとかえって危険かもしれない - 低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告
これによると、
「江部先生の推奨している糖質制限食」vs「糖質60%の通常の高糖質食」
ではなく、
「糖質30~40%のマイルドな糖質制限でカロリー制限してない食事スタイル」vs「糖質60%の通常の高糖質食」
を比較すると、マイルドな糖質制限では発癌リスクが上がるかもという事の様で、スーパー糖質ダイエットとは別の話の様です。
低糖質ダイエットについて賛否両論があるようですが、自分が3ヶ月続けた経験からすると、短期間に体重を減らすことが出来る事は間違いないと思います。
ただ、社会システムが炭水化物を中心とした食生活をする様に出来上がっているので、外食には不自由し、食費も多く掛かる様になっています。このため、目標体重を達成した後、どの様にするかは白紙状態なのですが、目標体重達成までは続けて行きたいと考えています。